大好きなコレクション [FASHION] [コラム]
元気をもらうものにファッションがあります。そんな僕の大好きな見て元気をもらえるコレクションの一つが、ジョン・ガリアーノの2008春夏コレクション。
当時のガリアーノと言えば昨今のファッションショーにはまず見られない作風・・・装飾に装飾を重ね、ドレスはとことんボリュームを出し、ヘアメイクも装飾過剰。だからこそ断トツのファンタジー感があり、見ていて最も楽しいショーのひとつでした。
2003春夏コレクション “Asia Major”
2004春夏コレクション"Pretty Baby"
そんな中発表された、2008年春夏コレクション。会場は、パリ郊外にあるフランセーズ・スタジアム。セットには、メリーゴーラウンド。(しかも「星は全てを知っている」と書いてある。笑)
一言、ディズニーランドのアトラクションである。恐らく会場にいたプレス全員が、「またいつものやりすぎ可愛い大会だろ」そう思ったはずです。
ましてや、ガリアーノは仕事・プライベート共にパートナーでもあり、愛し合っていたスティーブン・ロビンソンを死別で失ったばかりであり、悲しみのどん底の中で作られたものです。
あのガリアーノが最愛のパートナーを失い、「星は全てを知っている」なんて幼児的な事を言い出したのだから、一体どんな幼児的ファンタジーを見せられるか・・・・そんな気分の中で発表されたコレクション。
ところが、始まってみると、全てのカードがひっくり返されます。
服も演出も、ここ数年のガリアーノの作品の中で最もリアルクローズかつセクシー。
完全に直球勝負な最も感動的な作品となり、動揺と言ってもよいショックが会場に居た世界中のプレスに走ります。
ジュリアン・ディスによるヘアスタイルはクラシックかつ、ハイパーハイクオリティな作品が続き、ジェレミー・ヒーリーによる音楽は、メリーゴーラウンドの手回しオルガンと、ゲイ・ディスコを凄まじい技巧でマリアージュさせ、一秒の無駄すらないほど完璧な20分の音楽作品として成立させており、この素晴らしいショーを見事に支えています。
「メリーゴーラウンドから溢でた人生の苦楽を乗り越えるエネルギーは、会場はもとい、この夜パリ中に感染し、この瞬間、総ての人々が楽しんでいるという完璧な時間を作り出したと言えるだろう。」
当時のプレス記事にこういったことが書いてあったのを今でもよく覚えています。
モデルのキャッチュでセクシーな動きを、あのガリアーノが手取り足取り指導したのを想像すると涙が出てくる。
最後に登場したガリアーノは、いつものビクビクとした表情ではなく、今まで見たことがない力強い自信に満ち溢れた表情で登場するんですけど、この姿を見るといつも感動して涙が出てしまう。
彼は非常に大きなものを失ったが、非常に大きな物を得たのです。
(このショーは間違いなく彼にとってのターニングポイントとなり、以降のガリアーノ作品がより研ぎ澄まされた作品へと進化していったのは言うまでもありません)