瞳(ART)
アンティークの世界には「瞳」だけで勝負したジュエリーが存在する。
"Eye miniature"と呼ばれる、18世紀末頃の品々である。
Miniatureとは1700年代~1800年代初頭、英国のジョージアン時代に流行し数多く製作された、精密に描かれた小さな絵画(主に肖像画)のこと。
その中でも、イギリスで18世紀末~19世紀初頭に貴族階級の間で流行したのが、片目のみのポートレイトEye miniatureだ。
Eye miniatureをジュエリーにしたものはブローチがいちばんポピュラーだったがペンダント、指輪、ブレスレット等も作られていた。
このフェティッシュかつ独特の感傷的な気配を感じるジュエリーは、例えば亡くなった配偶者を偲んだり、階級の違いで交際が許されなかった相手だったり、不倫相手だったりと誰にも知られずに密かに交際していた人などを称えるために、人々はその人の目を小さく描いて、ブローチや指輪などの持ち歩けるアクセサリーに描くことを依頼したのです。
「目」といった極限まで断片化された特徴は、ほとんどの人にとっては匿名で識別できませんが、身につける人にとっては(襟の下などに隠して)とても深くパーソナルなものとなっていたのです。
そんなEye miniatureのアンティークの作品の数々を今回は紹介したいと思います。
ヴィクトリア時代末期に作られたタイピン。素材は、象牙、水彩絵の具、金、ダイヤモンド。あどけない目にダイヤモンドの涙。いびつなカットのダイヤモンドがぐるりとまわりを囲っているのも趣があるデザイン。ロイヤルコレクショントラストより。
https://en.wikipedia.org/wiki/Eye_miniature