ワクチンについて解説します

(※長いです。興味のある方向け記事)


 知識がないことは悪いことではないけれど、知識がないと正確な判断をすることができません。

僕はウイルス専門家でも医師でも何でもありませんが、誰でもわかるように噛み砕いてブログに書いてみます。

皆様はワクチンの概念がいつ生まれたのがご存知でしょうか。

1796年エドワード・ジェンナーという医学者が天然痘を予防する方法を発明したのが始まりです。


つまりワクチンは200年前に考案されたシステムです。

ジェンナーが何をしたかと言うと、牛痘という牛版の天然痘を人間に注射しました。


この牛版の天然痘は人間版の天然痘によく似ていますが、人間では発病しないものです。


牛痘を注射された人間がどうなったかと言いますと、人間版の天然痘にもかからなくなったのです。

いわゆる天然痘の免疫が出来た状態になった訳です。


生き物というのは自分の身体の中に免疫という自分以外の有害な物と戦いシステムが用意されています。

簡単に言うと身体の中に戦士が存在するようなもので、これを免疫細胞と読んでいます。

免疫細胞には色々な種類があり、マクロファージやキラーT細胞(変異ウイルス撃退のカギ、免疫の主役「キラーT細胞」新型コロナ克服へ活用)などがあります。

これらの細胞たちは色々なやり方で病原体を破壊することで、病原体に身体を破壊されることを防ごうとしている訳です。

一方B細胞という、いわゆる「抗体」を作り出し病原体を無力化する仕事をする細胞があります。この抗体は感染を防御する働きがあるタンパク質の「補体」と協力して病原体の動きを封じこめし、発病を防いでくれます。

ただし抗体と言うのには特異性があり、病原体ごとに形が異なります。

つまりどんな病原体にも通用するオールマイティーな病原体は存在しません。

なので病原体に応じたそれに対応した抗体を我々の身体は作っていく必要があります。

ただし1回作られた抗体の情報はメモリーB細胞という細胞が数十年にわたって保持し続けるので、次に同じ病原体が来た際には即剤に抗体を作り出すことができます。

これを獲得免疫と言います。


この獲得免疫の仕組みを応用しているのがワクチンです。



天然痘の話に戻ると、人では発病しないけれど天然痘にに良く似ている牛痘を身体に打ち込むことによって体の免疫細胞はそれを排除しようと活動します。

人間では発病しない牛痘とはいえ、体内にとっては異物である事には間違いないので、免疫細胞はそれを破壊しにかかります。

その過程で牛痘用の抗体も作り出され、メモリーB細胞に保管されます。


この状態で本物の天然痘がやってくると、免疫細胞は以前戦った免疫細胞とよく似ているなと思い、牛痘用の抗体を即座に大量生産し、天然痘に取り付かせます。

すると天然痘は短時間で排除され、発病には至らないという訳です。


これは牛痘のウイルスと天然痘のウイルスの形が非常に良く似ているから出来ることです。

天然痘に感染する前に牛痘に感染させることにより身体の免疫細胞に戦闘訓練をさせるということです。




ワクチンの仕組みはザックリこんな感じです。

そして現在では色々な病気に対してワクチンが開発されています。

このワクチンは大きく分けて2つ種類があります。

・生ワクチン

・不活化ワクチン

この2つです。どちらも本質的には変わっていなくて、免疫細胞の訓練用の素材をどうるかという違いです。

生ワクチンは生きた病原体をそのまま弱毒化したもの。(但し余裕で人間側が勝てる程度に弱らせてあります)

不活化ワクチンは病原体を「殺して」から使うものです。


しかしながら生きたまま接種する「生ワクチン」は効果が高いのですが、リスクとしてはごくごく稀にその病気にかかったような反応が現れることもあります。免疫疾患の方や抗癌剤治療をされている方は使わないケースもあります。しかしながらその病気にかかった場合のリスクと比べて小さい場合は、それでも生ワクチンを使う場合もあります。(持病持ちの方はワクチン接種については各自必ず主治医に相談してください)

そして不活化ワクチンを使った場合は、死んだ病原体なので安全な反面、実際に身体の中での戦いも少ない為免疫の反応が若干弱いのと、効果が長続きしないという欠点もあります。

わかりやすく言うと、敵の死体を連れてきて免疫細胞に分析させるといったことが行われるワクチンです。



ちなみに身近な感染症、インフルエンザワクチンについて。

これは何故毎年打たなければならないかと言うと、病原体(特にRNAウイルス)に関してはその性質上遺伝子が突然変異してコロコロ変わる確立が非常に高いのです。

つまりある意味新種のウイルスが出現していることになります。遺伝子が違うということはウイルスの形も違うので、元々の抗体が効かなくなることも多いです。

なので抗体を作り直す必要があるので、ワクチンの製造側は毎年今年の流行りやすいウイルスのタイプに合わせて毎年作っているわけです。

渡り鳥から広がる病気インフルエンザに対するワクチンは、鶏卵を使って作られる不活化ワクチンです。

インフルエンザワクチンの発症予防効果は30~60%程度と高くありませんが、重症化予防効果は30~70%、死亡抑制効果は80%程と高い統計結果が出ています。


そしてこの人類の英知であるワクチンは歴史を見ても「ペスト」「スペイン風邪」などあまたの世界的な拡大を起こした感染症をを根絶してきました。

ちなみに副反応やアナキラフィシーは当然ですが微々たるものながらも一定数は出ます。

これはワクチンに限らず風邪薬や漢方薬をはじめ、全ての薬も同様です。

(ゼロリスクはこの世に存在しません。車の運転も出来なくなります)

以上がザックリしたワクチンの説明でした。




では、新型コロナウイルスの場合どうなるのか検討してきます。



新型コロナウイルスの正式名称はSARS-CoV-2と命名されています。

このSARS-CoV-2に感染した時の名前がCovid19です。


このCovid19予防の新型ワクチンについて説明します。

今回の新型コロナウイルス用のワクチンには上で説明した2つのようなウイルスそのものは入っていません。

その代わりに新型コロナウイルスの一部をコードするメッセンジャーRNAが入っています。


このメッセンジャーRNAについて解説します。

まずDNAという言葉を聞いたことがあると思いますが、我々の身体を作る設計図であるこのDNAは4種類の「塩基」によって構成されています。

DNAはヒトの細胞では、核の中の染色体にあり、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類でできています。

DNA中ではAとT、GとCが結合していて、その結合の対を塩基対と言います。

このATGCの塩基を大量に繋げていくと、

このようにATGCの組み合わせだけで出来る情報が出来上がります。これを遺伝子と呼んでいます。

我々の遺伝子もつまるところ、このATGCの集まりで表現されています。

生物の世界で言うところの「文字」のようなものだと思ってください。
この文字の配列の仕方でどのようなアミノ酸を作り出すか決まり、このアミノ酸を沢山つなげたものをタンパク質と呼んでいます。
このアミノ酸の繋げ方は数え切れない程存在し、無数の種類のタンパク質が存在しています。
我々の身体の筋肉、心臓、胃腸や肺、爪や髪の毛にいたるまで、全てアミノ酸の繋げ方が違うだけです。
DNAの塩基情報を読み取って、その情報を元にタンパク質を組み立てることで我々の身体は出来ているのです。

このDNAからタンパク質を組み立てる際にアミノ酸を運んでいる大切な役割を担っているのがRNAです。

DNAからタンパク質に至る流れをざっと説明すると、DNAの配列に従って、いったんRNAという別の核酸に情報が転写さます。このRNAはDNAの情報をコピー機のように写し取れるようになっていて、DNAから取ったコピーを元にタンパク質への作業を行います。
またRNAはタンパク質への「運び屋」の仕事が終われば速やかに身体の中で分解されるという便利な構造を持っています。

つまりDNAとタンパク質の間をつなぐ重要な存在としてRNAは存在しているのです。
(DNA⇒RNA⇒タンパク質)


そしてこういったDNAからコピーを取ったRNAを元に作業する、こういった目的で使われるRNAを「メッセンジャーRNA」と呼んでいます。
(ちなみに他の目的を持ったRNAもあったりします)


そしてこの人が持つ同じRNAを持っているのがウイルスと呼ばれるものです。


ウイルスが例えば人の喉に入り取り付いたとします。
人間の持つタンパク質製造工場は、人のDNAから生み出されたRNAと外から来たウイルスが持っていたRNAとの区別がつきません。
なので、ウイルスのRNAをDNA由来のRNAだと勘違いしてしまい、その設計図でタンパク質を作ってしまい、人間の一部となってしまいます。
これがウイルス感染の原理です。
ウイルスは細菌と違い「生命」ではなく生き物ではありません、ですから広めるのは人間を介してです。そして再び喉から飛沫としてウイルスは他の人へとばら撒かれることになります。




新型コロナワクチンに話を戻します。
新型コロナウイルスワクチンには、コロナウイルスそのものではなく、コロナウイルスを作り出す為の設計図であるメッセンジャーRNAが入っています。




これが打ち込まれると、コロナウイルスの一部の設計図であるメッセンジャーRNAが入ってきます。
すると細胞内のタンパク質製造工場は、そのmRNAを元にタンパク質を製造します。
しかしながらコロナウイルスの一部を身体で製造するといっても、コロナウイルス全部ではなくて、その一部のスパイクタンパクと呼ばれる部分のみの設計図がこのワクチンのRNAには入っています。

このスパイクタンパク質を簡単に言うと、ウイルスの手の部分です。
「手」だけなので、コロナウイルス由来のスパイクタンパク質が体内に生み出されたところで感染したりはしません。
超ヤバイ怪物への対策をする為に、手だけを作るので当然襲われたりはしませんし、抗体を作るには充分です。
要するに新型コロナウイルスのワクチンにはコロナウイルスそのものではなく、ウイルスの一部分の設計図(メッセンジャーRNA)が入っており、体内でそれを作り出してもらうことによって免疫に対処してもらうという仕組みになっています。

従来型のウイルスそのもの。もしくはそれを不活化したもの。それを注射するのではなく、
ウイルスのRNAを入れるというのが新しいところです。


コロナワクチンが何故このタイプのワクチンにしたのかというと、早く大量に作れるからです。
中身はバイオプリンターという装置で、まるで3DプリンターのようにRNAは生産出来る訳です。
Covid19用のワクチンは、出来るだけ早く開発する必要がありました。

なので、この方法が取られたわけです。


このmRNA型ワクチンは今まで作られたことのないタイプです。
世界初のタイプなのでこれを打ってから5年後、10年後どうなるかといったデータは当然ありません。
よって未知だから危険だと思う方がいらっしゃるわけです。


しかしメッセンジャーRNAワクチンの仕組みを正しく理解すれば一体何が危険なのかわかりません。結局は風邪をひくのと同じことが起こっているだけだからです。
風邪をひくことが危険だと言うならばそうなのかもしれませんが、将来的に危険なのかと言われたらどうなのかと思います。


またRNAという言葉を聞いて遺伝子組み換えを想像して人間の遺伝子が組みかえられると言う陰謀論的に騒ぐ方がいますが、
確かに遺伝子であるRNAを打ち込むのは間違いありませんが、生物には絶対的な基本原則があります。

先に説明した「DNA→RNA→タンパク質」という順番です。

遺伝子というのはDNAからRNAにコピーされることはあっても、RNAからDNAにコピーされるという(RNA→DNA)逆の順番は生物上、有り得ません。
(セントラルドグマの法則と言います)
そもそもRNAは不安定なので、すぐに分解します。


陰謀論者は製薬会社がワクチンと一緒に逆転化酵素的なものを混ぜているかもしれないとう者もいますが、分析装置を持っている人間が分析するべすぐにバレる話ではありますし、それを言い出してしまうと市販の風邪薬として売られているものにも毒薬が入っているのじゃないかなといった類の変な陰謀論になってしまいます。



また、このコロナウイルスのメッセンジャーRNAの塩基配列はオープンソースで世界中、誰でも見れるように公開されています。

実際に日本で使われているファイザー製ワクチンのメッセンジャーRNAコードなども第三者により全て公開されており研究者に関わらず誰でも見ることができます。

リスクを恐れるのも良いことですが、正しい判断をして恐れる必要があると思います。





また、妊娠中、授乳中の方のワクチン接種を迷われている方も多いですが、
日本産婦人科感染症学会から正式に安全だと言う発表がなされています。

接種後の発熱などにはアセトアミノフェンを内服できます。コロナワクチンが特別なわけではなく、妊娠中も使える薬はたくさんあります。一部NGの薬があるので必ずかかりつけで確認して下さい。







このパンデミックが起こした急激な進歩により生まれたmRNAワクチンは遺伝子工学などの新しいテクノロジー、科学技術の進歩と研究者の英知による科学史に残る快挙と言われており(今年のノーベル医学賞も当確点灯しています)、
この技術を生かして、開発の先頭を走るモデルナ社は「癌を無くす」メッセンジャーRNA癌ワクチンの臨床試験に既に入っています。




ワクチン摂取は、持病で打てない方も中にはいるし思想も含めてあくまで個人の判断ではあるので難しいところではありますが、いつまでもマイノリティに合わせていては経済との両立が不可能なのはもう皆さん薄々気づいているはずです。

商売をしている人間の立場からのポジショントーク的な意見になりますが、僕個人としては先日の報道で出た国内でのワクチンパスポートの運用(ワクチンパスポート、国内利用指針を宣言解除後公表)にも賛成です。というより、現時点では他に方法が考えられません。

何も保障を受けられない僕たちの業界も例外ではなく、例えば一等地と言われていた原宿、青山、渋谷エリアの美容室やブティックの30%近くがコロナの影響により閉店しました。一番酷いのが竹下通りで40%が空きテナントになっています。

ワクチン接種が進むことにより深刻な状況になっている医療現場への逼迫を少しでも抑えながらも、ワクチンパスポートの運用による「感染リスクの高い人は引き続き我慢していただき、リスクの少ない人は今よりも活動してください」といった方向性を政府は打ち出して経済の再開を進めていかないと接種率も増えないし、いつまでこの同じ状況を続けるんだということになります。



参考にしていただき、個々の判断で動いていただければなと思います。




参考書籍

・ワクチン ―基礎から臨床まで― / 医学書・日本ワクチン学会 

・新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実/峰宗太郎・山中浩之

・今だから知りたいワクチンの科学ー効果とリスクを正しく判断するために/中西貴之・宮坂昌之

その他様々なWEBサイト