酒と絵画 #1 (ART)

 

『フォリー・ベルジェールのバー』(Un bar aux Folies Bergère)1882年/エドゥアール・マネ



お酒というものはいつの時代も常に人々の日常の生活に寄り添っていた。

今回はシャンパーニュ。

マネが死の前年、梅毒に苦しみながら完成させた傑作。

キャバレーの回廊にあるバーのカウンターに立つ女性の背後は全面の鏡で、左上の隅に映っているのは空中ブランコ乗りの足、女性に話しかけているように見える右上の紳士は、実は左側の少し離れた位置から劇場を見下ろしている。

キャバレーないしミュージックホールと呼ばれる酒を飲みながらショーを観る劇場は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのパリを華やかに彩った。

いわゆる大人の社交場で、バーに立つ空ろな表情の女性は娼婦である。

精緻に構成されたきらびやかな画面からは、酒を飲む祝祭の場のときめきとざわめき、男と女、高揚感と退廃感がないまぜになった、ある種の独特のムードが色濃く匂い立つ。

ここで注文するのは、もちろんカウンターの左手に瓶が並ぶシャンパンだろう。

シャンパン(シャンパーニュ)は仕込んだワインの発酵が寒さのため途中で止まり、暖かくなって再発酵したため瓶の中で発泡(これを瓶内二次発酵と言います)したという偶然から生まれたワインだが、その祝祭性から19世紀中ごろには社交界のパーティーに欠かせない存在となっていた。



『シャンパングラスのバラ』1882年/エドゥアール・マネ