小さな森に春の風が吹くと(散文)

 

春の風が吹くと僕らは歳をとって、死に近づき、生きる喜びを感じる。

段々と乾いてくる空気は温かく、あらゆる乗りこなせない力が自分の身体に満ちて、まるで親しい親友のような心地よさすら感じる。


それが春の約束。

生きる喜びの姿。

恋の予感。

花粉症で真っ赤に腫れる瞼、喉、鼻の奥のほう。

喜び。

ちょっと変わる身体の匂い。


それが春のはじまり。

不安定な世界の実情。

冬眠を終えた虫たちが僕と君の絡みついた裸の上を飛んでいく。

君はそのうち一匹と仲良くなり、乳首の上にそれを乗せる。


いつまでも眠い君、

いつまでも眠い僕、

いつまでも眠い感染症、

いつまでも眠い平和、

いつまでも眠い緊張。


微かに聞こえてくるマッキントッシュの起動音と川の水の流れ。

鳥の鳴き声。

世界が動いている音。



亡くなった友よ、そっちの世界はどうだい?

そこは誰もが約束しているような世界?
それとも見たことのないような世界?

よかったらここに来て、僕と恋人の前で教えてくれ。

裸のまま目を瞑り、君を待つよ。



春の強い風が、愛よりも感謝よりも敬意よりも速く、
軽やかに恋と花粉を乗せて、僕たちを吹き飛ばそうとする。



あのヘッセの詩集の中で集合しよう。

あの砂漠の穴の中で集合しよう。

あの曲の中で集合しよう。

あの数式の中で集合しよう。

そこで動物を狩り、花を摘んで、哲学書を歌いながら読み、

彼女たちのキスによって作られた酒を飲もう。



キエフの街のロボットが動き出し、ゴリラの真似をする。

それを見た母親が笑う。

姿は見えない。



冒頭からお聞きの美しい曲はウクライナのキエフを拠点に活動する素晴らしいバンドBlooms Corda。

彼らの春が、一刻も早く美しさを取り戻し、あなたの中に流れていきますように。


心の中の、「小さな森」。