BLUESTAR BURGER閉店に見る、飲食店の価値とは
2年前、メディアを巻き込んであれだけ話題になったブルースターバーガーが僅か2年で全店舗撤退を発表した。ITを駆使した接客不要の無人店舗で、格安価格でグルメバーガーを提供するといったモデルの店舗だった。
焼肉ライク系列のハンバーガー店が2年もたず撤退 東京・神戸に出店も...「現在のモデルで全国展開は困難」日本は長い間デフレである。最新の失業率をみたところ2.6%。コロナが猛威をふるっていた前年同月に比べ21万人の減少で、12か月連続の減少。と、日本もインフレ傾向のおかげである程度は抑えられてきてるようだ。
インフレになるとモノの物価はあがる、それに伴って賃金も上がる。(日本の最低賃金も、厚生労働省の発表で今年2022年度は過去最高額に設定されている)
そうすると失業率が落ちる、給料が多少増えてもモノの値段が上あがっているので結局は同じなのだが、物価上昇率と失業率の関係は明確にリンクしている。経済学で言うところのフィリップス曲線の話だ。
私も初めて飲食業の経営をはじめて3ヶ月目に入った。
先日、近くの個人経営の老舗うどん屋さんに家族で行った。普段意識して見ない値段をよく見てみと、私がよく頼むボリューム満点の天ぷらの盛り合わせが600円、たぬきうどんは580円だった。
今、世界中で物の値段が上がり続けるインフレトレンドにも関わらず、日本の飲食業界では自ら身を削ってディスカウントに挑む人たちが沢山いるが、身を滅ぼすだけなので本当に止めた方がいいと思っている。
日本でもトライアルさんであったりイオンさんであったりが、とにかく大量仕入れや自社製品のPB化でコストダウンを目指して値段を下げた。これがAmazonなどネット通販になり価格競争が激化し、ネットを探せば同じ物でも安い物を簡単に探せるようになった。
中間マージンを取らない代わりに極限まで値下げができるのがこの手のビジネスだ。
私たちのBARでは逆を行く。生産者さんからカクテルに使用する美味しい果物を購入する。キューバ産のミントやフレッシュハーブを自分たちで栽培して使用する。フランスが誇るチーズ熟成士、エルベ・モンス氏が作るチーズを取りよせる。オーセンティックBARでは提供しないクオリティのワインを仕入れてバイザグラスで提供する。
チーズは18ヶ月~長い物で3年かかるし、ワインは当店で出してる物でも熟成で10年以上かかっている物もあるし、ウイスキーにおいては60年間もかかっている物も出している。
そしてそれを管理している人のコストが時間経過と同じだけかかるという産業だ。
先程のうどん屋さんに話が戻るが、職人のお父さんが打つ手打ちの麺にかかる労力、出汁に使う大量の鰹節、醤油やみりんなんて作るのに何年もかかったりする。
飲食店経営をするまでは特に気にしていなかったけれど、うどんは大衆に支えられている食文化とは言え、あんなに美味しい手打ちうどんが580円なのはちょっと自分なら考えられない。
先のフィリップス曲線を思い出してほしい。デフレ傾向、すなわち物価が下がれば、失業率があがる。この場合、人が雇えなくなるという負のスパイラルにも突入する。
飲食業が、第一に如何に人がいないと成り立たない職業なのかとよく思う。
中にはお客様が来ないからといってドリンク半額キャンペーンや、グルメサイトのポイント2倍キャンペーンなどを打ち出す居酒屋や企業もあるが、これは100%間違っているということを声高にいいたい。
私にとってモノの価値というのは、定価か、ゼロかどちらかしかない。
対価というのはディスカウントの力が働いて初めて買うものではない。
とくに飲食業において、人が作るものであるからこそ、なおさらだ。
もしも来客が少ないのであれば、価格やポイント還元などの小手先マーケティングを脱却して、価値のインフレーションを目指した方がいい。
それは単に物としての価値だけではなくて、体験の価値の上昇だ。
これは私の経営する美容室でも同じだけれど、他よりも値段の高い物を商いにするということは、技術接客は勿論、空間デザインなども含めて総合的な「お客様の体験価値」を常にブラッシュアップしていくことを心がけなくてはいけない。
人が体験価値を創造するのが一番効率がよく、しかも未来においてAIに勝てる唯一の提供価値であると信じている。
値下げをしてデフレにすると利益が出ないので給料を上げられない=人を雇えないし、辞める。そうするとオーナーシェフばかりが大変になるから、厨房で仕事しっぱなしになりお客様への目配りやコミュニケーションができなくなる。
ディスカウントを止めて、体験価値を高めていくことがこれからの飲食店の目指す方向性だ。
冒頭のブルータスバーガーの撤退に思うのは、結局ITを駆使したオートメーション化もキャッスレス化も店舗側のエゴでありお客様は求めていなかったのだ。コスパを求めたり値段が安いから集客できる時代は終わっている。
やっぱり、飲食店に大切なのは「人と体験」である。
写真は昨晩開催したBAR FILMの会員限定イベント"SPICE CURRY NIGHT"で私たちが提供したカレー。
オリジナルレシピのスパイスカレーとイベント限定のオリジナルカクテル、カレーに合うワインや日本酒をペアリングするといったイベントだ。
私たちのBARでは常に新しいことにチャレンジしながら今後もお客様の体験価値を高めていきたいと考えている。
冒頭の素敵な写真は写真家の多田ユウコさんに先日撮影していただいた写真。いつもありがとうございます!
本日の1曲
Tom Misch - Smells Like Teen Spirit