哀れなるものたち(MOVIE)

 



※上映終了間近なので思いっきりネタバレしてます。もしこれから観る方は閉じてください。


しかしこれだけ沢山の友人やお客さんから「山田さん、アレ、もう観ました・・・?」と聞かれたのは初めての経験かもしれません。「アレ」と言うだけで、映画ファンは誰しもわかってしまうくらい、今最も大きな話題になっている本作品。


監督はギリシャ人のヨルゴス・ランティモス。過去にも「ロブスター」だったり(これも設定が超絶面白い)「女王陛下のお気に入り」だったり(以下同)素晴らしい怪作を連発していますが、本作品がキャリア最高傑作と言っても異論はないでしょう。


今作品の設定はこうだ。

とある天才マッドサイエンティストが、川辺で飛び降り自殺した女性の死体を拾ってくるんですよね。

女性は妊娠していました。

この美しい彼女を生き返らせるために、お腹の赤ちゃんの脳みそとお母さんの脳みそを手術で交換して、生き返らせることに成功(つまり、身体は大人。中身は幼児)、こういったところから人生がスタートする女性の人生を描いたのが、本作「哀れなるものたち」なのです。

もうね、このあらすじ(設定)だけで面白すぎます。

しかも演じるのは絶世の美女、エマ・ストーン。

彼女が様々な新しい体験、人間としての喜び・・・初めて自慰行為を覚えた瞬間、初めてセックスを覚えた瞬間、初めてエッグタルトを食べたその瞬間。初めてダンスを覚えたその瞬間。

「モノクロ」だった画面は、初めての快楽(セックス)を覚えた瞬間からビビットに映し出され、それらは衣装でも見事に表現されていく。

私たちは「子ども」を見ているのではなく、外見「大人」(しかも絶世の美女)がいちいち驚いたり、感動したり、社会的規範を乱しながら周りを混乱を陥りながらも(世の中の仕組みを破壊しながら)言いたいことを全て発言し、行動し、その成長が色鮮やかに描かれる。

その後初めて知ることになる「絶望」と「社会の成り立ち」からのストーンの成長も素晴らしい(ここからが本当に面白くなるのでネタバレしないでおきます)。

本作品は特にフェミニズム界隈で後世に渡って大変大きな評価を得ることになるのは確定しているとは思うけど、女性は勿論男性にも是非見て欲しい作品だ。


他の人の意見が気になり軽くネットのレビューを少し見ると、激しい性行為のシーンがあまりに多くて苦手だとの意見が多いが(私はこの表現の一体何が激しいのか不明であったが)日本人は何と勿体ない観方をする人が多いのだと憂いた。私のショップが強制的にクローズされた時の件もそうだが、もっと観客にはフラットにその奥にある表現を感じ取って欲しいものだ。