会社を辞めたいと思っている若者たちへ




先日、ご高齢のお客様からこんな話を聞いた。「新卒の孫が入社した会社を1週間で辞めてしまって、学生時代のアルバイト先に戻りフリーターになってしまった」同様のケースがこの4月は例年以上に多発しているらしい。


私は25歳の時に独立と言うか社長になることを選び、当時勤めていた東京の美容室を退社した。(その後、三重に戻りフリーターをしながら物件のリースなどで紆余曲折があり大変な思いをしながら26歳の時に点と線はスタートする)


今思えば、この時に人生で「仕事を辞める」と言うことを破棄したんだと思う。

ビジネス、そして生き方における人生の決断としてそれが私が今まででした一番賢い決断だったと思う。

好きなことを仕事にするからこその、「辞められない権利」。それが私の人生に大きかった。


今の新卒の若者が辞めて駄目だとは思わない。

むしろ自分にとってつまらない仕事をしているともし私に相談する若者がいたとしたら、「すぐに辞めた方がいい」と伝えると思う。

若さはどんな失敗をも取り戻せる時間と再生可能なやる気を持ち合わせている。今は若いけどと思って、つまらない仕事をしているとすぐにおじさん、おばさんになって夢を語ってはならないような気持ちになってしまう。

まだまだ道半ばな自分だけど、ある程度の人生の浮き沈みを経験した中で思うのは、好きなことを仕事にするのが一番だということだ。

僕はとにかく髪の毛が好きだ。おしゃれが好きだ。植物が好きだ。美術やデザインが好きだ。音楽が好きだ。食事とワインが好きだ。

これら全てを勉強であったりライフワークとしてやり続けて自分の経営している各事業に落とし込んでいるけれど、努力しているという感覚がなくて、ひたすら楽しいのだ。

人からみると、それが努力に見えるのかもしれないけど、当の本人は楽しくてしょうがないのだから無理して続かぬ努力よりも圧倒的に「好き」なパワーの方が強いのである。

そして「好き」は必ず人生で勝てるはずだ。大小問わず、失敗など恐れるに足りない。

若者にはどうぞ「好き」なことを仕事にして、人生を思いっきり謳歌してほしいと思う。


私は今でもボンボンの息子的なことを誤解されて言われることがあるけれど、全くそんなことはない。金策に関してはそれなりの苦労を経験しているから言えるけれど、若くてお金がなくても「やりたい」は出来る。25歳の頃の自分がそうだった。

美容室を例に出すと、小さなテナントをリースして、ちょっとした気の効いた鏡と椅子を中古品で手に入れ、その空間に美しい花でも生けて心地よい音楽が流れてさえいれば、あとは下手に内装にお金を加えなくたって素敵な美容室が出来るはずだ。

今の時代であれば、勤める環境が合わないならば一人で立ち上がる権利というものを行使しても良いのではと思っている。

ただ、一人はものすごく一人だ。これを楽しみとして捉えるのか、悲しみと受け止めるのか。

始めのうちは浮き沈みや事故や急カーブもあるかもしれないけれど、シートベルトをしっかりと締めて前を向いて運転していればいつかはきっと上手くいく。

人生なんて、答えの無い羅針盤のようなものだ。

希求すべきは自らの幸せ。それを若者にはしっかり考えてもらえればなと思う。


(写真は15年程前、点と線を始めたばかりの26歳の頃の自分。ウィリアム・クラインのポスターと共に)



羊文学のアルバム「若者たちへ」より