デビッド・リンチ監督の訃報
今朝起きて彼が亡くなった記事を見た。
家族はフェイスブックの投稿で死を発表し、「彼がいなくなった今、世界には大きな穴があいています。しかし、彼がよく言っていたように、『穴ではなくドーナツに目を向けてください』」と綴った。最後の最後までその表現はリンチそのものだった。
昨年は肺気腫で苦しんでいたみたいだけれど、絶対に引退しないと言っていたリンチ。
映画史上に残る大傑作「マルホランド・ドライブ」(2002)と、さらにその奥へと突き進んだ「インランド・エンパイア」(2006)で映画監督としての創造のピークに到達。
その後変化する映画界にあって彼は「たとえ素晴らしい作品であっても」「多くの映画が興行成績で上手く行ってない」現状を語り、その一方で「興行で上手く行っているような映画は自分がやりたいと思うようなもの」ではなく「私は作りたくない」と心境を明かし、キャリアのピークに長編映画業界からの引退を発表。
2010年代以降は短編やドラマでの映像表現の発表、画家として現代美術の世界でご活躍なさったり、音楽家としての活動、近年のハイライトは2017年発表の「ツイン・ピークス THE RETURN」で、カッティングエッジで信じられない程クールで素晴らしい作品を残してくれた。
最後の最後まで子供のようにやりたい表現だけを貫いて、奇妙でエレガントな世界を映像化してくれた自由の象徴。私の憧れ。
綿密なアートディレクションと音楽へのこだわりもいつも楽しみだった。
去年辺りもだけど私に影響を与えてきた巨匠たちが次々といなくなる。
しかし言うまでもなく、故人の素晴らしい作品たちは時を超えて永遠に残り続けます。
そしてまた鑑賞する側の私たちも、自分の現在地の環境であったりで、同じ作品でもその時々で受け取り方が大きく変わる。
彼の「死」だけを受け取るのではなく、彼の人生で残した作品の数々を通して表現したかった世界に目を向けながら、これからも愛で続けていきたいと思います。
今日は、度々彼の映像の世界に現れた、ドーナツとコーヒーをいただきながら過ごしたいと思います。
尊敬と憧れを込めて。
あと、今度からもし「耳」が道端に落ちていたら、絶対に拾うからね。