大きな家
先日新年明けて1作目の映画鑑賞に行ってきた。去年も年が明けて一発目に観に行った作品が凄く良くて「あ、これを今年超えるのないかも?」と直感思ったけど、今回も同じ感想。
死別、経済的理由、虐待やネグレクトなどにより、児童養護施設に両親と離れ暮らす子供達を丁寧に追いかけたドキュメンタリー。プロデュースは俳優の斎藤工さん。
出演者のプライバシーを考慮し、劇場公開のみ。配信・パッケージ化なしの作品だ。
物心ついた時にはそこにいた。3歳や4歳、もっと幼くても預けられる場所。
3歳までの記憶が何も無いと言う小さな女の子が出演していた。恐らく3歳までの記憶が酷すぎて、自身で抹消しないと生きていけないのだろう。
日本には今、4万2000人の子供達が児童養護施設で暮らしているという。
鑑賞してすぐに感じたのは、まずカメラのショットと編集が物凄く良い。繊細な少年少女たちを本当に見事に撮影し、音楽の使い方も素晴らしい。キラキラとした子供たちの美しい日常を、見事にカメラに収めていて凄いなと思う。
大人数での食卓、掃除や洗濯、入学式、卒業式、部活などの日々の営み。
海辺での釣り、夏の登山、ネパールの児童施設へのボランティア訪問などの野外活動。それらを背景に、7歳から19歳までの子供達が登場する。
「実家でなければ家族でもない。友達よりはたしかに近いけれど、他人」
「実家でなければ家族でもない。友達よりはたしかに近いけれど、他人」
「ここしか知らない。だから、不幸とも思わない。」
子供たちの言葉が胸に響く。
子供たちの言葉が胸に響く。
不幸と決めつけては失礼だが、それでも彼らがたまたま生まれた場所の境遇によって人生のスタートからハンデを背負っていることは間違いない。
随分話は飛ぶしヘビーになるが、先日ニュースで見たウクライナで捕虜にされた北朝鮮の若干20歳程度と思われる男性のコメントにも胸が痛くなった。
「戦闘の本番に似せた練習だと聞かされて来ている。本当に戦うことになるとは知らなかった」
「ウクライナはいい場所ですか?残れるなら残りたい」
とか言っていて、地理的にはほんの少しだけズレた場所に生まれていたら、今頃ソウルや渋谷で遊んでいたような若い男の子が、今、大勢(3万人超)ロシアに何も知らずに連れてこられて、そして戦死している。これが令和の時代、今現実に起こっている。
生まれた場所の境遇って何なんだ、本当。
映画に話が戻るが、観賞後に妻が「映画に出てる子は何故だか皆同じ雰囲気だったね。高校生の頃、この雰囲気に似た子がクラスに居た。今思えば、そうだったのかも。」とつぶやいていて、確かにと私も思うところがあった。可愛いけど隠せない影がある子って、実際に私のクラスにもいた。
この施設に入れるのは、最初から親がいなくて国の補助金で入る子もいるが、最も多いケースは親が存命で、ちゃんとお金を払って入れている。家に子供がいると、酷いネグレクトをしてしまうからだ。
彼ら、彼女たちは、徐々に物事が理解できるようになっていくにつれて自らの生い立ちを理解していく。
施設には、18歳になったら退所しなくてはならない残酷とも言える現実が待ち構えている。
頼れる家族が一人もおらず、たったひとりで社会に放たれる18歳以降の方が生き難いのは想像に容易い。
実際、施設で育った子供は、社会に馴染みにくい傾向があるという事が映画の冒頭でも語られていた。
この作品を見て部外者の温室育ちの私が涙を流すのは違うと理解はしているが、色々と近頃の出来事が全部重なり止まらなくなる。
彼らの将来に、笑顔と明るい未来を心から願って。